福岡高等裁判所 平成12年(う)61号 判決
被告人のみが控訴している場合に,控訴審が職権調査により原判決を破棄し,原判決が認定した事実よりも被告人に不利益な態様の事実を認定することが許されるかが問題となるが,本件の場合は,公訴事実と同一ないし同程度の態様の事実を認定するものであって,検察官の公訴事実の範囲内で認定するものであること,検察官としては被告人の弁解する軽い態様の行為が認定され,犯意も未必の故意にとどめられた点に不満は残るものの,量刑が実刑で妥当と考えたことから控訴まではしなかったが,もし軽い刑が宣告されていたならば,事実誤認を理由に控訴することも十分考えられる事案であると認められること,量刑に不服はないが,原判決の認定する犯行態様を前提にして量刑するならば原判決の量刑は重きに失するとして減軽されるおそれがある場合には,検察官において必ず控訴の申立てをしておかなければならないとするのは,事案の迅速,妥当な解決の上で必ずしも相当とはいい難い面があることなどの点にかんがみると,本件のような場合には,刑事訴訟法第393条第2項の職権調査が許されるというべきである。
このように解しても刑事訴訟法第402条により原判決より重い量刑は言い渡すことができず,被告人に不利益は生じない。したがって,本件においては,控訴審が職権調査により,公訴事実と同様の犯行の態様を認定し,その犯意についても傷害の未必の故意ではなく確定的故意によるものとし,事実誤認により原判決を破棄することは許されると解する。